取引環境を整える vol.2
下請Gメンが聞いている取引の実態<後半>
当局では中小企業者を訪問して伺ったお話の中から「価格決定方法の適正化」「支払条件の改善」「型取引の適正化」「働き方改革のしわ寄せ防止(中小企業の働き方改革に関して)」の4のテーマについての好事例や悪事例を11月の下請取引適正化推進月間にあわせてXにてご紹介しました。Noteの前半では「価格決定方法の適正化」についてご説明しています。後半は残る3テーマをご紹介します。
外部リンク「中国局X」
https://x.com/meti_Chugoku
Note前半「価格決定方法の適正化」
まず「支払条件の改善」について、Xでは手形等のサイト短縮や現金化が進んでいるとご紹介しました。手形のサイトについては令和6年11月から60日(従前は繊維業を除き120日)を超えた場合は「割引困難な手形の交付の禁止」に該当するおそれがあるとして下請法の指導の対象としています。
また、紙の手形や小切手は令和8年度末までに全面的な電子化の方針が示されています。サイトの短縮だけではなく、電子記録債権への切り替えや現金(金融機関振込)化をお願いします。
なお、現金や手形等の支払方法や支払期日については発注時の書面等に記載する必要があります。そして手形の郵送料や銀行の振込手数料を下請事業者に負担させている場合は事前に書面で合意する必要があります。合意している場合でも実費を超える額を負担させることはできませんので、金融機関の窓口振込からATMやネットバンキング利用へ切り替えた場合などは忘れずに金額の変更を行いましょう。
次に「型取引の適正化」について、製造業では「金型」「木型」「樹脂型」など様々な方が使われています。金型は主に金属のプレス加工などに、木型は鋳物の砂型造形などに、樹脂型は試作品や小ロット品の製作などに使われています。変わったものではトムソン型という、材料をプレスして打ち抜くための刃を合板に取り付けたものがあり、パッケージ用の厚紙を展開図の形に抜く加工などに使われます。
こうした型ですが、業種によっては大型なものや点数が多くなることがあり、Xでも「保管料が取引先から支払われているが、返却や廃棄処分が進まない大型の金型を移動するリフトの購入、倉庫増床などの費用は自社負担」などの悪事例をご紹介しました。
次回以降の具体的な発注時期を示せない状態になっていたにもかかわらず、金型等を無償で保管させたり、現状確認の棚卸し作業等をさせるなどした場合は「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」の違反行為に該当するおそれがあります。
金型に関する下請法違反は、法に基づく勧告案件で令和5年度が13件のうち3件、令和6年度も11月までの10件のうち3件あり、12月にも案件がありました。私たちが実施している法に基づく立入検査等でも対応状況を確認させていただいており、親事業者の方は適切な保管費用の支払いや不要な型の廃棄の推進をお願いします。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/sokeizai/202302katakanri-manual.pdf
最後に「働き方改革のしわ寄せ防止(中小企業の働き方改革に関して)」ですが、Xでは、休日設定や残業減少に取り組んだ結果、先輩社員の離職率の低い企業について学校側が評価して毎年4、5人の高卒採用ができているという事例を紹介しました。
人材確保の点からも、自社の待遇改善を行うのは重要なテーマですが、短納期発注による買いたたきや納期や工期の過度な年度末集中など下請事業者にしわ寄せを生じさせないようにすることも重要です。また、やむを得ず短納期発注や急な仕様変更などを行う場合には、残業代等の適正なコストは親事業者が負担し、大企業等の親事業者と下請等の中小事業者が共存共栄できるよう配慮しましょう。
これまで4つのテーマをご紹介しましたが、これらは政府が親事業者と下請事業者双方の「適正取引」や「付加価値向上」、サプライチェーン全体にわたる取引環境の改善を図ること等を目的とした「未来志向型の取引慣行に向けて」で公表している取引適正化重点5課題です(残る1つは知財・ノウハウの保護)。
未来志向型の取引慣行に向けてhttps://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/miraitorihiki.html
こうした取引上のお悩みについては、各都道府県に相談員や弁護士による無料相談や裁判外紛争解決手続(ADR)を行うことができる「下請かけこみ寺」を設置していますのでご活用ください。
下請かけこみ寺
https://www.zenkyo.or.jp/kakekomi/
今回は経営を揺るがすリスクと言う切り口で取引適正化をご紹介しましたが、災害等のリスクについては中小企業等経営強化法に基づく「事業継続力強化計画」という制度もあります。さまざまなリスクを経営改革のチャンスと捉え、積極的に改善に取り組みましょう!
事業継続力強化計画
https://www.chugoku.meti.go.jp/seisaku/chusho/jigyoukeizokukyouka.html